本製品は、近日中に販売可能となる予定です。
2010年に小惑星イトカワから世界で初めてサンプルを地球に持ち帰ってきた「はやぶさ」ミッションから、まったく新しい宇宙機サブシステム製品が生まれました。
近年、小型から超小型の人工衛星が登場し、その多くが地表の撮影や地球観測などにその性能を発揮しています。しかし、それらの衛星の多くは単体での性能しか発揮できず、実用的ではありません。デルタV能力を備えていれば、コンステレーションを構成し、実用的な機能を備えビジネスに展開することができます。しかし残念なことに、推進システムを搭載することは容易ではありません。
小型・超小型衛星の最大の問題は、推進システムにあります。高性能な、つまり高温のスラスタを作るには、高度で特殊な機械や材料が必要になるため、低コストの衛星では費用をかけられないのです。現代のスラスタは非常に高価です。性能や質量を重視するか、価格を重視するかの問題になります。そこでパッチドコニックスが解決法をご提案します。コールドガススラスタです。ただし、非常に低コストで製造できます。
コールドスラスタは通常、推進剤を気体の状態で搭載します。そのため、搭載できるガスの量は非常に限られており、これまでは姿勢制御にしか適用されてきませんでした。その解決策として、推進剤を液体のまま搭載することにより、推進剤の密度を非常に高くすることに成功しました。この方式を高密度コールドガスジェット(HDCGJ)と呼びます。推進ガスは宇宙空間で液体から生成されます。
HDCGJというと、ストレートなアプローチで簡単そうに聞こえるかもしれませんが、そうではありません。多くの場合、加熱は沸騰を伴いますが、これは非常に効率の悪いプロセスであり、熱伝導率も著しく低下します。液体は加熱され、左のP-Tダイアグラムのように気液平衡状態に達します。この平衡状態のガスは湿度100%の湿りガス、つまり蒸気であり、衛星から蒸気の一部を取り出して排出すると、簡単に再び液体に戻ります。気体部分はミストだらけになってしまい、液体をもっと加熱して別の平衡状態になるまで推力には使えません。
地上の発電所では、この難点を超臨界でガスを製造することで回避しています。まず水を臨界圧力以上に加圧し、熱を加えます。超臨界流体は沸騰しないので熱伝導率が高く、高エンタルピーを得ます。その超臨界流体を膨張させ、効率よく乾燥ガスを得ることができます。右欄にプロセスを掲載しています。
これは、そのまま衛星に適用できるのでしょうか?答えはノーです。加圧にはポンプ装置が必要で、通常、重く、電力を消費します。そこで、宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、ポンプを搭載することを一切前提としない、独自の新しい発想を展開させました。この装置は、直径の異なる2つのピストンとシリンダーで構成されています。熱交換器から発生したガスが、無動力で元の液体を臨界圧力以上に加圧し、これを自己加圧と呼びます。左にCADで描いた配線図を掲載しています。本技術を含め、JAXAが開発した技術を世界に発信する企業、それがパッチドコニックスです。
実際にエンジニアリング・ハードウェアを製作しました(写真は断熱材が有るものと無いものです)。真空チャンバー試験も無事終了しました。これはModel-Aと呼ばれるもので、1kgの推進剤を搭載し、400Nsecのインパルスを連続的に発生させることができます。零度でも超臨界状態を維持することが可能です。パネルを除いたシステム質量は約3kg(乾燥状態)です。左に示しているは試験結果の例で、ガス容器が常に加圧された状態で推力が出ていることが分かります。100mNの推力で平均30〜40W程度の低電力で超臨界を良好に維持しています。推力は用途に応じて調整されます。
タンクや容器の大きさによって、インパルスの量を調整することができます。本エンジニアリングモデルでは、比較的保守的なインパルスを採用しています。ここで想定している典型的な超小型衛星は、左のような50kg級の衛星です。コンステレーションを構成するのみであれば、大きなインパルスは必要ありません。秒速数メートルで十分なのです。400Nsecは、50kg級の衛星で8m/sに相当します。F10.7のフラックスが平均150SFUの高度550kmの軌道で、逆弾道パラメータが0.01m2/kgの場合、10年間のコンステレーションの維持には2500Nsecのインパルスが必要です。これは当社のシステムで言えば6kgの推進剤に相当します。重たいですが、非常に低コストで作ることができます。
そのためのドライバー回路基板も同時に開発しました。ヒーターや熱交換器の制御、圧力調整、メイン衛星バスとのテレメトリやコマンドのshakeなど、すべてをこなします。これまで飛行実績のあるマイクロプロセッサを2個搭載しています。PCBサイズは85mm×85mmで、1Uサイズのパネルにフィットします。左にブロック図と実際のPCB写真を掲載しています。クリックで拡大画像になります。
ガス発生器とPCBは生産準備が整っており、発注後半年以内にお客様のご要望に応じた製品をお届けします。費用・コストについては、お問い合わせフォームよりお問い合わせください。
今年もパッチドコニックスとJAXAが1UオールインワンHDCGJ推進系ハードウェアを製作しました。左はそのCADイメージです。衛星の内部でエネルギーハーベスティングを行い、超臨界を維持するという少し変わった装置です。温度20度以上で超臨界を維持します。100mm x 100mm x 100mmの1Uサイズのボックスに収まります。質量は乾燥状態で1.4kgです。左に実物の画像とPCBを掲載しています。推進剤150gで60Nsecのインパルスを発生させます。PCBは1枚のパネルに取り付けられています。今年、ガス発生器部分を製作し、真空下でテストを実施したところ、大成功を収めました。スラスターモジュールの製作に関しては、お客様からの要件が出そろうのを待つのみとなっています。推進剤容器は、容量に余裕があれば補助的に増やします。本製品は、現在、コネクタでの組み立てとなっており、ご発注いただきましたら半年以内に製作の準備ができる予定です。
パッチドコニックスでは、2018年3月までに50kg級衛星用のModel-BおよびModel-C HDCGJを開発する予定です。これは、エネルギーハーベスティングの装置であり、より多くの推進剤を搭載することができます。Model-B HDCGJは、6kgの推進剤を搭載し、2500Nsecの推進力を発揮します。高度550kmで10年間の衛星運用に耐えられます。Model-Cはそれに続くもので、2018年秋に登場します。推進剤を臨界圧力以上に加圧する独自の「流体ピストン」装置を搭載しています。Model-Bと比較して、Model-Cの最大の利点は、エネルギーハーベスティングを補うために、より低温での運用が可能になることです。
パッチドコニックスは、キューブサットから超小型衛星までの推進に関して、特別な知的財産を所有しています。
ストレージ容量を最大限に活用するために、特許技術を使用しています。
これにより、キューブ型推進システムに最適な比体積推力を得ることができます。
お客様のご要望に合わせたモジュラースラスタを提供することが可能です。
また、文字通りモジュール方式で、ミッションの要求に合わせて推進モジュールを増強する特許も出願されています。
衛星を製造する皆さんは、推進システムを収容するための構造を調整するといった設計から解放されます。
右は、超小型用12Uと4タンク構造の下部に取り付けられた4Uサイズの推進ユニットです。(->)
最新システムは、液体と気体が分離し、液体推進剤を機内の熱交換器に確実に供給するModel-C構造を採用しています。この方式はJAXA(宇宙航空研究開発機構)の独自技術に基づいています。
現在は、軌道上で、毎週、姿勢軌道同時制御を実施中です。
* 当サイトに掲載される画像やデータは、合同会社パッチドコニックスおよび各著作者に帰属します。
これらの使用に関しては事前に書面による許可が無い限り禁止といたします。